- 2005-01-08 (土)
- Category: 映像
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心理学会を震撼させた“実験”
被験者求む。
・拘束時間:2週間
・報酬:4000マルク
・応募資格:不問
・実施場所:大学内模擬刑務所
メーカー: ポニーキャニオン
発売日: 2004/03/03
これは、怖い!
ビデオ屋では『カルト映画』として括られていたのだけど、カルト趣味がなくても普通に楽しめると思う。
作中で行われた実験というのは、過去に実際に行われ問題になったことがある実験だそうだ。被験者の半分を囚人役、残りの半分を看守役とし、模擬刑務所でそれぞれの役割を演じさせるロールプレイング実験である。言ってみれば『刑務所ごっこ』。役割というものが人間の精神に与える影響が実験の主題である。
初めの方は、囚人役も看守役も報酬を貰うことに集中している。とりあえず無事に2週間を乗り切って、報酬を貰おうぜ!というノリが見えかくれしているのだ。ところが、時間が経つにつれて事態は変わってしまう。囚人役はマイペースにロールプレイング生活を楽しんでいるのだが、看守側に変化が現れるのだ。より看守らしく、秩序を保とう、と。そして彼らは『秩序を守るための罰』を厭わなくなる。初めは口頭で叱るだけだったのが、精神的な見せしめになり、とうとう身体的暴力へとエスカレートする。初めは雇い主から与えられたロールプレイングであったはずが、いつの間にか彼ら自身が使命感を負い、秩序を守るために何をするのも怖れなくなる。この過程で、雇い主側は看守役たちに何も命じておらず、ただそれを見ていただけである。看守役の内側でいつの間にか使命は使命として絶対的なものへと成長してしまったのだ。そして看守役の行動の結果、囚人役たちは『囚人らしく』振る舞うことを余儀なくされる。逆らえば身体的暴力が待っているからだ。初めはのんきな『刑務所ごっこ』が、いつしか本物の刑務所よりも残酷な支配と抑圧の世界に変わるのである。
この心理状態の変化はとても怖かった。看守役たちはそれまで普通に生活していた真面目な一般市民だったのに、使命を守るためなら他人を傷つけることも厭わなくなっていった。普通に考えれば、暴力には痛みが伴うことくらい分かるのだ。なのに彼らはそれを躊躇しなかった。役割は彼らの行動に影響し、彼らの行動の結果が役割を強化する……そのようなループ状の構造が見えたような気がした。あくまでも役割は役割としてそこにあるだけなのだが、役割によって行動を規定されてしまった人間はあまりに悲しく、滑稽だ。暴走してしまった彼らの上に、かりそめの役割ではなく、本来の社会的な役割に基づいた制裁は下る。非日常に迷いこんでしまった一般人たちの最後は悲しかった。
そういえば、この映画のタイトル『es』なのだけど、これは心理学でいうところの『エス』なのだろうか? 心理学でいうところの『エス』は欲望や衝動を指す言葉なのだけれど、欲望や衝動のままに行動できた人間がこの中にいただろうか。彼らはむしろ、役割に支配され、役割に操られたように見える。深読みすれば、役割から受ける支配を言い訳にして、衝動的に振る舞っていたのかもしれない。
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