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終わりを判断するのは誰だろう

傷痕関連の話。

私の中ではすでに終わっていた問題が、他の人にとっては終わっていないという食い違いの話。こういうのは不意打ち的に襲ってくるからこそ怖い。

それは今から半年以上前の話。ちょうど仕事を辞める人がいて、送別会をするからと、会社の同僚で集まった日。女性だけでわいわいやろうという企画主旨で、仕事が休みの土曜日に、ある先輩のマンションに集まった。

休みの日で、会場がマンションということもあって、お子さんを連れてきている人がいた。まだ喃語しか話すことのできない1歳児と、もうだいぶ口達者になっている3歳児。口達者と言っても、完璧に意思の疎通ができるわけではないのだが。

その日、私は何故か子ども二人に気に入られ、大人同士で会話をするより、子どもの相手をしている時間が長かった。私は元々人間が得意な方ではなく、大人同士で話しているとついつい精神的に無理をしてしまうから、子どもと他愛ないことを喋っている方が楽だった。それに、まだ言葉が完全じゃない子どもたちが、なんとか私と意思の疎通を図ろうと、一生懸命話してくれるのが嬉しかったというのもある。耳はある程度大人の会話にも向けていたし、たまに混じりはしたけれど、子ども担当になっていた。

3歳の子の一人称は「しーちゃん」。私は、しーちゃんのお父さんのこと、お母さんのこと、好きなもの、嫌いなもの、いろいろな話を聞いた。子どもの口から語られる世界は、飾り気はまったくないけれど、とてもきらきらしていた。1

だけど子どもは子ども。しーちゃんは、お話しするのに満足したのか疲れたのか「おかーさん眠いー」「おかーさんおしっこー」とか言いはじめて。しーちゃんのお母さんが、しーちゃんをばたばたと御手洗いに連れていって、私はそれを機に、大人同士の輪の中に入った。「子どもの相手たいへんだったでしょー」とか言われながら。

それからしばらくの間、大人同士で会話をしていた。会社の人間関係の話、それぞれのご家庭の話、最近見た映画やテレビや音楽など、本当にありふれた話。だけど、普段は人とは意図的に距離を置くようにしていたから、なんか新鮮だった。

突然、手首のあたりに子どもの手が触れて、なんだろうと思ってふとそちらを見ると、しーちゃんが私の手首をじっと見ていて。その日も当たり前に長袖を着ていたから、傷痕は隠れていたはずなのだけど、しーちゃんは、長袖の袖口から見えるか見えないかの位置にあった傷痕を、めざとく見つけてしまった。

「ねーこれなにー?」しーちゃんは言う。

世界が暗転したかのような気持ちになった。

「おねえちゃんは昔、けがをしたんだよー。
 ちょっとだけ痕になっちゃったの」

動揺を隠して、笑って言う。

「けがってなあに?」

「血が出て、痛い痛いになるの」

「これいたいの?」

「もう痛くないよ。もう治ったから大丈夫よ」

「しーちゃんにはけがないよー」

「そだね、しーちゃんはけがないね。げんきだね」

「おかーさんにもない」

「うんそうだね」

「おねーちゃんにもない」(※また別の人のこと)

 ……モウカンベンシテ orz

その間じゅう、しーちゃんは楽しそうだったけれど、私の方は気が気ではなかったりして。場の空気がどうなっていたのか、そのときのしーちゃんのお母さんの反応がどうだったか、他の人はどうしていたのか、全く覚えていない。覚えていないというより、入ってこなかったのだと思う。

私の中ではリストカットの問題は既に片づいていたし、傷痕の問題は残っていたものの、長袖を着て隠していればなんの問題もないと思っていたし、そうすることで傷痕の問題もほとんど片づきかけていたのだけども。そのとき、私の中では終わりでも、他の人にとっては終わりではないことを痛烈に思い知ったというか。

案外、私が気にしている以上に、他人の方が気にしていることも多分あって。物理的なコンプレックスをどんどん切り落としていくというのは、私が自信を回復する手段に留まらず、他の人が私と快適に付き合うためにも必要なことなのかもしれない。

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Footnotes

  1. ちなみに1歳の子は、最初は私に興味を持ってくっついてきたけれど、やっぱりまだお母さんの方がいいらしく、お母さんに抱っこしてもらってべったりしてた。ふられちゃったw Back

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