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復活の日

  • 2009-06-25 (木)
  • Category: 書籍
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復活の日 (ハルキ文庫)復活の日 (ハルキ文庫)

昭和39年 (1964年) の小説w

もう40年も前に書かれた小説だけど、ここ数年SARSだ、鳥インフルエンザだ、豚インフルエンザだ、とパンデミックじみている上、長距離弾道ミサイル実験だ、地下核実験だと軍事的にもなにやら物騒な感じなので、非常に生々しく、おもしろく読めた。

以下例によってネタバレあり。

舞台は、1973年の地球。書かれたのが1964年と言うこともあり、時代の端々に東西冷戦、核戦争、資本主義 vs 共産主義な香りが漂っている。そんな環境で感染力も致死率も高い未知のウイルスが世界中に蔓延り、人類が滅亡…? という設定。

私は第二次大戦以降の近代史をほとんど知らない人なので、時代背景を思い浮かべるのにすこし手間取りました。1964年頃というと、世界ではベトナム戦争やってて、日本では左翼学生が暴れてた、くらいしか知らないです。このあたりの歴史は少なくとも義務教育中には習わず、その後がっつりと本を読むこともなく、テレビやネットでちょろりと小耳に挟む程度で今まできたので。

小説の中に当時の東西両陣営の国の人々が登場し、それぞれの視点で語るので、時代背景をある程度知ってた方がおもしろいと思います。でもまぁ「当時世界は冷戦まっただ中、核戦争の危機、BC兵器1 の開発競争」がリアルに存在したこと、南極の開発競争をやってたことを把握できれば読めるw

こういう世界情勢の中、某所で秘密裏に開発されていたMM-88菌という病原体が、ひょんなことから漏れてしまうのでした。冬の間は氷の中で眠っていたものが、春になって大暴れ。しかも軍事機密だったため、漏れてることに誰も気づかない。おまけに、MM-88の漏洩は、表面上は既知のウイルス類の新型(インフルエンザ、家禽ペスト、小児マヒ等)が流行しているようにしか見えなかったという、タチの悪さ。で、おかしいなぁと思っている間にどんどん世界に広がって、人がばたばた死んでいく。単なる既知のウイルスの新型の蔓延ではないと気づいたときは地球上のほとんどの人間が死滅。開発のために南極にいて、隔離されていた一万人程度が生き残った、という。

最初に目を引くのは、メインで描かれていたのがインフルエンザだったということで、やはり最近の新型騒ぎと似たような光景が描かれていたこと、それからもっと悪質で致死性の高いものが流行したらどうなるかという、かなり悲観的な未来予想図が描かれていたこと、でしょうか。

リアルの新型騒ぎと似ていたのは、

  • 小説中ではヨーロッパで発生した新型が、人の移動に乗ってじわりじわりと日本に近づいてくる(日本は島国なので感染は最後の方らしい)
  • 「どこどこで発生!」とマスコミが追いかけている
  • そのうち国内に入ってきて、報道は「感染者○○人!死亡者○○人!」「各地で臨時休校」
  • 通勤電車でマスク人増殖
  • 咳をするとみんなぎょっとする
  • みんな引きこもるので外を歩いてる人が極端に減る
  • 病院に行列
  • 診ているお医者は昼夜問わず働きすぎて疲弊(←医療崩壊ちっく)

なんだかついこの間、実際にこの目で見た風景です orz

小説中では時代が1973年ということで、まだタミフルやリレンザなどの特効薬が開発されておらず、医者も診るには診るけど結局暖かくして寝てなさい、としか言えず、しかしウイルスの致死性が高いので患者は死んでしまう……。

私は、現在リアルに流行している新型インフルエンザの病原性が高くなり、おまけに特効薬への耐性を獲得した後を想像して薄ら寒くなりました。

それでもワクチンが開発されたら大丈夫よねー、という話なんですが、これも小説中では見事に封じられており、小説中では家禽ペストで鶏がばたばた死ぬのでワクチンの生産ができなくなる、という設定。

そして私は、リアルで鳥インフルエンザが大流行して鶏がばたばたと死に、ワクチンの生産が危機に陥ることを想像して薄ら寒くなったのでした……。ワクチンの生産が危機に陥るというのは、新型インフルエンザに限らずゆゆしき自体で、現在ワクチンで予防している病気—— 狂犬病、結核、ポリオ、麻疹等——が猛威をふるう可能性も示唆される、ということであり……ぎゃー鳥インフルエンザは勘弁してー(((( ;゚Д゚)))

こんな感じで、医療が行き渡っている日本であまり病気の心配をせずのほほんとしている現状が、感染症一発で地獄に突き落とされる想像をしてマジでへこみました。近年リアルにSARSだの結核だの鳥インフルだのの発生が報道されているのでシャレになりません。しかも小説中でばたばた人が死んだ後の描写が妙にリアルでグロテスクだったのでよけいにへこみましたのでした。

さて、そういうわけで、小説中では南極に約一万人を残して滅亡してしまった人類ですが、東西冷戦の置きみやげである、主人を失った核兵器のせいでさらに一悶着あるのがすごくおもしろいです。「未知の殺人ウイルスの恐怖」だけでもかなり興味深いテーマなのですが、世界情勢を反映したひねりが加わり、当時の時代背景だと思うのだけど陰謀論や疑心暗鬼や軍部の暴走もありで、かなりおもしろい。いや……不謹慎なんだけど、リアルで近くに物騒な国がいるから怖いは怖いんだけど、まぁ、小説中で人類が滅亡した時点でリアル世界からは切り離して楽しむことにしたのですよ (´・ω・`)

当時の世界情勢への皮肉っぽい描写もあり、著者の主義主張、哲学的な考察なども含まれていておもしろいので、未読の方は是非。人類滅亡に加え核の危機という、どう考えても重く暗いテーマだけど読後感は爽やか。けっして悲観的な小説ではない。生命って素晴らしい、結論はそれだと思いました。

個人的には、読むのはけっこうたいへんだったけど。著者の文章の書き方が、これまであまり私が読んでこなかったタイプであることがひとつの理由。それから、これまで登場人物が少なく、舞台が狭い小説ばかり読んでいたのも理由になりそう。多くの人や世界じゅうの地名が出てくる小説は、話を把握するのが大変なのであります。あと歴史や地理に疎いので各国の関係性や都市の所在地をよく分かってないというのも……あるかな……orz

そんな感じです。

小説とはあまり関係ないけど、私が子供の頃(1980年代)にはまだ南極開発って言ってた気がするし、映画の南極物語もテレビで何度もやってた記憶があるんだけど、いつの間にか宇宙開発ばっかり言われるようになった気がする。南極開発どうなったんだろ。

Footnotes

行頭の数字は本文中の注釈番号に対応さしてます。

  1. B:生物兵器、C:化学兵器 Back

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