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カイバ

カイバ Vol.1 [DVD]カイバ Vol.1 [DVD]
2008年にWOWOWでやってたアニメ。
当時はまったくノータッチで、このあいだDVDで見た。

舞台は、人間の記憶をチップに移したり、データバンクに保存することができるようになった世界。人々(特に富裕層)の間では、好みのボディ(物理的な身体)に乗り換えたり、嫌な記憶を消したり、楽しい記憶を植えつけるということが普通になされるようになっていた。貧富の差は大きく、富裕層は電子雲の上、貧困層はその下で暮らしており、貧困層がボディ狩りや記憶狩りの犠牲になることも多い……。

そんな状況の中、記憶喪失で目覚めた主人公「カイバ」が記憶を巡る旅をする……以上あらすじ(多分)

以下ネタバレも多分アリ。

公式:カイバ|WOWOW ONLINE

キャラクターの絵のタッチが手塚治虫あたりを意識したような可愛らしい感じで、背景も絵本調なので、童話ちっくなふんわりした感じのファンタジーだと思ったら全然違った。話の雰囲気、世界観ともにかなりシリアス orz

「記憶」というのは、個人的に人生的なテーマでもあるので、とても興味深かった。

DVD4枚のうち、前半2枚は世界観の説明+短編エピソード。あまり第2話までが大きな物語のイントロと、世界観の説明になっているが、説明セリフがないので、記憶喪失でそこにたどりついたカイバの目線で、体験ベースで世界を理解する追体験ができるようになっている。説明的なシーンを見逃さないように、最初2話くらいはかなり真面目に見た。

第3話以降の単発エピソードはなぜかどれももの悲しい。ていうか切ないし、たまにむかついて頭にくる場面も。各話の冒頭に挿入される「好きな身体に乗り換え♪ 嫌な記憶を消去♪ 楽しい記憶をダウンロード♪」というノリのいいあらすじの説明が、エピソードを見すすめるにつれて、だんだんむなしく聞こえるようになった。だって、エピソードで描かれているのはその罪深さ、業の深さばかりなんですもの……(´・ω・`)

個人的に好きなエピソードは第3話の「クロニコのながぐつ」と第4話の「ばあさんの記憶の部屋」。両方とも悲しい話だけど、それぞれ家族愛、夫婦愛が暖かく描かれていていい。最後は悲しい運命でも、確かに幸せな時間が存在した……という感じで。

前半の影の主人公は、宇宙船保安官のバニラだと思う。こいつのダメな感じがすごくいいです。何度「だめだこいつ……」と思ったことか。そのくせ、いないと話が重くなりすぎる、という不思議キャラなんだよなー。

で、後半2枚が謎解き+総括になってまして。記憶喪失物のお約束として、主人公・カイバが記憶を取り戻すのが話の軸。しかし、登場人物・勢力の思惑が何重にもぐるぐるしていて一筋縄じゃいかないあたりがまた素敵。

作り方としては、物語の中でひとつの解釈が提示され、受け手が「ふむふむなるほど」と腑に落ちかけたところで「実は…」とまた別の切り口での解釈が提示され、受け手が意表をつかれる、という感じ。「自分が知っているものだけが『本当』とは限らない」 そりゃ頭では分かってるけど、忘れるじゃん。忘れたところで盲点をつかれ、各エピソードの印象ががらっと変わってしまう。こういう作り方が気持ちよい。

9話以降はちょっと展開が早く、内容を詰め込みすぎの印象。ただ、その分、前半で提示された謎がドミノ倒しのように連鎖的に解けていくスピード感を味わえたので、これはこれでありなのかな?

後半戦の主役はやっぱりポポ。てゆかこいつ嫌いなのでいい感じで因果応報になって、ちょっとざまみろとか思った。でも因果応報具合があまり後味のいいものじゃなかったし、ポポの物語は虚無感ばかりが漂っていたので、ざまみろと思った直後になんか凹んだ。終盤は痛すぎて見ちゃおれん orz

その他のサブキャラは、後半に近づくにつれ男前になっていったな!
でもそれ死亡フラグだから!ヽ(`Д´)ノ

最終的に作中の謎が全部きれいに解ける(正確には「解釈」と取れるものが提示される)ので、後で「あれって結局なんだったの?」と消化不良に悩むことがなくていい。

また、一回目に見たときは意味不明だったり、大して印象に残らなかったシーンでも、全てを知ってから見ると「なるほど」と思える部分がすごく多い。DVDの1枚目までは二回目を見たけど、同じシーンのはずなのに芽生える感情が違いすぎてびっくりした。というわけで忘れた頃に二回目を見よう。

ここまで、主人公のことにはほとんど触れずにきているけど、いちおう理由がある。主人公の人格に一貫性がなさすぎて思い入れをもてなかった……。話の冒頭で記憶喪失のまっさらな状態で目が覚めて、すぐにボディを取り替えて、しばらくは白いカバのボディの中、それからしばらくは少女のボディの中、最後にはカイバの元のボディに戻るけど、彼の人格はそのとき乗り込んだボディのバックグラウンドに影響されて規定されて。私は彼を一人の人間としてはどうしても見れない。記憶を失う前の彼と、記憶を失って旅をして学習している彼とは、外見は同じだとしても、全然異なる人間(人格)だから。

記憶喪失のカイバ以外にも、ボディは同じだけど中にある記憶が書き換えられている人物が何人も出てきた。そういう人物に関しては、なぜか個別の人間として見てしまうのよな……。ボディがA、記憶の内容がそれぞれ a、b、c とすると、全部個別の人間、Aa、Ab、Ac のように見える。

それで、記憶になんらかの形で障害がある人間は、外側から見るとこういう風に見えるのだろう、と思った。器は同じでも中身が違う。その人と共有しているはずの大切なエピソードを、その人が知らない。外見は自分が知っているその人なのに、その人の振る舞いはまったく別人のよう。それがどれほど恐ろしく、悲しく、業の深いことか。記憶は人格と密接に関係しているから、そこは絶対に弄るべきじゃない。

なんか科学の倫理についていろいろ考えさせられた気がする。クローンとか臓器移植とか、洗脳とか。

あ、あと、音楽がなんかすごくいいです。
サントラあったらエンドレスでかけたいと思う程度に落ち着く。

おしまい。

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